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2 0 1 6 年 6 月 1 5 日
調剤薬局大手各社の 16/3 期決算の注目点
調剤薬局各社の15 年度業績および16 年度業績見通しなどを踏まえ、現況に関する JCR の認識と格付上
の注目点を整理した。対象企業は 3 月期決算のクオール、日本調剤、メディカルシステムネットワーク、総
合メディカル、トーカイに、4月期決算のアインホールディングスを加えた計6社である。
1.
業界動向
医薬分業率は緩やかな上昇傾向にあり、15 年度には 70%に到達した。分業率の上昇に伴って調剤薬局市
場は成長を続けているが、成長率は薬価が引き下げられる薬価改定 1 年目に低位となり、その影響が一巡す
る2年目には高まる傾向がある。薬価改定2年目にあたる15年度は、高薬価のC型肝炎治療剤の処方が発
売直後から急速に拡大したことも寄与し、前年度比 8.2%と高い伸びを示している(図表 1)。これに対して
16年度は5.57%の薬価引き下げが実施されており、成長率は低位にとどまる可能性が高い。
16 年度調剤報酬改定の改定率は 0.17%のプラスとなった。ただ、後発医薬品調剤体制加算や基準調剤加
算の算定要件が厳格化されたほか、処方せん受付回数が月 4 万回超のチェーン薬局(おおよそ売上高 50 億
円以上の企業グループと想定される)だけを対象に調剤基本料が引き下げられる特例が導入されるなど、大
手には厳しい改定となった。これにより、大手各社の調剤報酬改定後の技術料単価は改定直前に比べ低下し
たと推察され、今後の対応策の推進によってどの程度カバーしていけるかが注目点となる。
厚生労働省は15年10月に「患者のための薬局ビジョン」を策定した。本ビジョンでは、すべての薬局が
25 年までにかかりつけ薬局としての機能を持つことを目指すとされており、さらに、35 年までには大病院
の門前薬局を中心に、より患者に身近な地域へと立地を移すことを求めている。16年度調剤報酬改定ではか
かりつけ薬局の機能を高めるために「かかりつけ薬剤師指導料」などが新設されており、今後も本ビジョン
に基づき制度改定が実施されていく可能性がある。大手各社の対応と事業展開への長期的な影響を見守って
いく必要があろう。
2.
決算動向
15年度は集計対象6社合計で売上高8,930億円(前期比16.6%増)、営業利益492億円(同32.6%増)と
増収営業増益、営業利益率は 5.51%(同 0.67 ポイント上昇)となった。個別にみると、全社が増収営業増
益を確保しており、そのうちトーカイ以外の5社の営業利益率が上昇した。薬価改定2年目で業績にマイナ
ス影響を及ぼす制度改定がない中で、出店間もない店舗の客数の増加やC型肝炎治療剤の使用拡大に伴う増
収効果に加え、後発医薬品調剤体制加算などの上位基準の算定が進み技術料単価が上昇したことが好調の主
な要因と考えられる。6社合計の営業利益は期初計画421億円に対し71億円超過して着地していることから
も、総じて順調な決算であったといえる。
財務面では、6 社合計の 15 年度末自己資本比率は34.64%(前期末比 1.27ポイント上昇)、DE レシオは
0.78 倍(同 0.10 ポイント低下)と改善がみられた。好業績を背景に、各社で自己資本の蓄積が進んだこと
が要因である。特に日本調剤の16 年 3月末自己資本は、自己株式の処分の効果もあって前期末比 84.1%増
加しており、全体の数値を押し上げている。有利子負債は日本調剤、メディカルシステムネットワークで減
少したものの、自社出店や M&A などを積極的に進めたその他の 4 社で増加した。一方、フリーキャッシュ
フローは全社がプラスとなったほか、6 社合計の投資キャッシュフローはマイナス 490 億円と前期に比べて
支出が90億円増加したが、営業キャッシュフローはプラス699億円(14年度はプラス458億円)に伸長し
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3.
決算における格付上の注目点
16年度は6社合計で売上高9,675億円(前期比8.3%増)、営業利益501億円(同2.0%増)の計画である。
売上高は全社が増加を予想する一方、営業利益はクオール、日本調剤、アインホールディングスが増益を計
画し、メディカルシステムネットワーク、総合メディカル、トーカイが減益を計画している。
売上高については、近年出店した店舗の客数増が見込まれるため、増収基調を維持するとみられるが、計
画達成には出店の進捗や M&A の成否が重要である。損益面では、薬価の引き下げと調剤報酬改定が主なマ
イナス要因となる。それを店舗数増による増収効果と技術料単価の引き上げに向けた取り組みによってカバ
ーしていくことが課題となる。各社の増減益の要因に大きな違いはないとみられるが、既存店舗の立地など
の特性により調剤報酬改定の影響度が異なることに加え、出店数や技術料単価の改善幅の前提などによって
業績の方向性に差が生じているものと考えられる。なお、調剤報酬改定への対応にはある程度の時間を要す
るとみられ、技術料単価は期末に向けて段階的に改善していくと考えられることから、業績も同様の傾向を
示す可能性が高い。また、日本調剤やクオールなどでは調剤薬局事業以外の事業の改善が連結業績を下支え
する計画となっており、それらの事業の動向も注目点となる。
各社ともに今後も継続的な出店やM&A を志向している。特に、後継者や薬剤師の不足を背景とするM&A
は依然として活発であり、営業キャッシュフローを上回る投資が実施されることも想定される。堅調な業績
を背景に総じて純資産は積み上がるものの、総資産や有利子負債も増加しやすい状況が継続すると考えられ、
全体の財務改善ペースは緩やかとなる可能性が高いとみている。
(担当)本西 明久・佐藤 洋介
(図表1)国内の調剤医療費、処方せん枚数、1枚当たり調剤医療費の対前年伸長率、薬価改定率
09 年度 10 年度 11 年度 12 年度 13 年度 14年度
15年度4-11月 (前年同期比)
調剤医療費 7 . 9 % 3 . 6 % 7 . 9 % 1 . 3 % 5 . 9 % 2 . 3 % 8 . 2 %
処方せん枚数 1 . 5 % 4 . 3 % 2 . 2 % 1 . 5 % 0 . 6 % 1 . 8 % 1 . 7 %
1枚当たり調剤医療費 6 . 3 % - 0 . 6 % 5 . 5 % - 0 . 2 % 5 . 4 % 0 . 5 % 6 . 4 %
薬価改定率 - - 5 . 7 5 % - - 6 . 0 0 % - - 2 . 6 5 % -
(出所)厚生労働省「最近の調剤医療費(電算処理分)の動向」等よりJCR作成
(図表2)調剤薬局各社の業績推移 (単位:百万円)
決算期 売上高 営業利益
親会社株主 に帰属する 当期純利益
総資産 自己資本
有利子 負債
注
クオール (3034)
15/3 期 114,363 4,243 2,155 59,573 19,152 18,187
16/3 期 124,957 6,709 3,641 69,921 20,837 23,194
17/3 期予 138,000 6,800 3,700
日本調剤 (3341)
15/3 期 181,844 6,647 2,778 130,141 17,635 67,893
16/3 期 219,239 10,489 6,329 157,609 32,473 66,361
17/3 期予 240,013 11,165 6,642
メディカルシステム ネットワーク
(4350)
15/3 期 75,548 2,641 885 45,587 5,797 24,603
16/3 期 87,715 3,783 1,720 48,847 9,796 21,769
17/3 期予 92,000 3,270 1,210
総合メディカル
(4775)
15/3 期 107,945 5,017 2,774 69,811 26,337 14,544
16/3 期 120,776 6,087 2,318 74,621 29,443 16,779
17/3 期予 126,507 6,005 3,730
アインホールディングス (9627)
15/4 期 187,904 11,452 6,197 114,149 47,928 15,311
16/4 期 234,843 14,619 7,917 139,888 53,259 21,742
17/4 期予 265,000 16,300 9,000
トーカイ (9729)
15/3 期 98,159 7,092 4,586 73,865 47,690 3,957
16/3 期 105,517 7,513 5,226 80,252 52,049 4,480
17/3 期予 106,043 6,647 4,501
6 社合計
14 年度 765,763 37,092 19,375 493,126 164,539 144,495
15 年度 893,047 49,200 27,151 571,138 197,857 154,325
16 年度予 967,563 50,187 28,783
(注)有利子負債は各社決算短信の短期借入金、1年内償還予定の社債、1年内返済予定の長期借入金、リース債務
(流動負債)、社債、長期借入金、リース債務(固定負債)、長期割賦未払金(固定負債)の合計
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【参考】
発行体:日本調剤株式会社
長期発行体格付:BBB- 見通し:安定的
発行体:総合メディカル株式会社
長期発行体格付:BBB 見通し:安定的
発行体:株式会社アインホールディングス
長期発行体格付:A- 見通し:安定的
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